<図解>熱放射の基礎と計算例

熱のキホン

熱放射とは、「3つの熱移動(熱伝導・熱対流・熱放射)を考えよ!」紹介した、

             電磁波によるの熱移動のことです。

熱放射 (熱ふく射とは?)

熱放射とは、熱ふく射(放射伝熱)とも呼ばれ、
特に熱や光として検出される波長領域にある電磁波の事です。
熱放射=可視光から紫外線、遠赤外線域までの電磁波。

電磁波には、γ(ガンマ)線・X線・紫外線・可視光線・赤外線・マイクロ波・電波に分類され、それらの総称がふく射といいます。

つまり、頭文字に”熱”がつくことで、
熱や光に関する波長域にある電波を指しているということですね。

物質すべてが大なり小なり、放射エネルギーを放っています。これまでご紹介した、熱伝導・熱対流とは、異なる放熱メカニズムです。

メカニズムは、こんな感じです!

①<高温物体は>分子や原子が絶対温度に応じて振動している(熱エネルギーを持っている)
 
振動という運動が電磁波に変換されて放射される。

②<低温物体>は、<高温物体>の電磁波を受けて、更に振動し、熱エネルギーが増幅される。(温度が上がる)

振動が電磁波として、伝搬される

熱放射の基本単位について

熱放射は、放射能や放射度とも呼ばれ、単位は、(W/m2)となります。
つまり、物体の表面の単位面積[m2]から単位時間[s]に放射される放射エネルギーを指します。

熱放射の反射・吸収・透過・放射率について

熱放射は、物体に入射すると、一部は反射され、一部は吸収され、残りは透過する。
反射率をρ(ロー)、吸収率をα(アルファ)、透過率をτ(タウ)とすると、
下記の式が成立する。

ρ + α + τ = 1

入射エネルギーをすべて吸収する物体を”完全黒体
入射エネルギーをすべて反射する物体を”完全白体
入射エネルギーをすべて透過する物体を”完全透明体”  と呼びます。

世の中に存在している物質は、完全黒体は存在しないといわれています。

理想的な黒体に対して現実的な灰色体の放射エネルギーの割合を、放射率を呼びます。
放射率は、ε(イプシロン)を用います。

また、放射率ε = 吸収率α となります。(キルヒホッフの法則)

放射率が高い物質は、良く放熱(放射)し、良く吸熱(吸収)すると言えます

熱放射の基本式(ステファン・ボルツマンの法則)

物体から放射される全エネルギー量(熱放射量)Eは、下記式で示されます。

$$ E = εσT^4 (W/m^2)$$

ε = 放射率
σ = ステファン・ボルツマン定数(5.67×10^(-8)(W/m2・K))
T =  絶対温度(ケルビン) ※摂氏ではなく、ケルビンなので注意!

この式を用いることで、放射エネルギーを定量的に求めることが出来ます。

この式より、熱放射は、絶対温度の4乗に比例することがわかります。

一般的には、150℃以上は、熱放射が支配的になるといわれています。

また、温度差のある2つの固体面での熱放射の伝搬は、下記式のように示すことができます。

$$E(W/m^2) = 放射係数×形態係数×σ×(面1の絶対温度(K)^{4} ー 面2の絶対温度(K)^{4})$$

形態係数とは、2つの面の形状・相対位置関係などによって決まります。
放射係数とは、伝熱が行われる2つの面の放射率の関数です。
下記式で算出可能です。

$$ 放射係数=\frac{1}{\frac{1}{ε1}+\frac{1}{ε2}-1} $$

放射率を捉えて設計に活かす!

上記の式から放射率εは、放射エネルギーの係数になるため、影響度は非常に高いです。
例えば、ある筐体の放射率がε0.2(金属鏡面)とします。筐体内部に発熱体があり、外側に放熱を促したいとします。この場合、0.2という数字はどうでしょうか。放熱に良い数字でしょうか。それとも悪い数字でしょうか。これは放射率を0.8にすることで放射を4倍向上することができるということです。
 なお、この筐体近辺に筐体内部よりも高温物体が隣接して放射を受ける状態にいる場合は、逆にリフレクター的な役割を果たすために放射率を下げるほうがいい場合もあります。

つまり、熱放射を計算式でとらえると、放射率の存在を知り、その放射率を意図的に操作して、設計課題に役立てることが可能になるのです!

[計算練習]放射放熱の算出


それでは、熱放射による放熱量を簡単に求めてみましょう!

例題
図の様なパネルヒーターが200℃一定になっている。
この時、放射による放熱量はどのくらいだろうか。
尚、パネルヒーター表面放射率は0.6とする。大気は15℃とする。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 熱放射の熱量計算.png

(答え)
熱放射の基本式 E(W)= σ × ε ×(T1^4 – T2^4) より、

E (W) = 5.67×10^(-8) × 0.6 × {(200+273.15)^4 -(15+273.15)^4 }

E (W) = 1612.8

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