<図解>熱対流の基礎

熱のキホン

熱対流とは、「3つの熱移動(熱伝導・熱対流・熱放射)を考えよ!」紹介した、

              流体 ⇔ 固体 の熱移動のことです。

ここで、流体とは(液体と気体)の総称です。

対流は、対流熱伝達とも呼ばれ、さらに大きく2つに大別できます。
① 自然対流  ② 強制対流

① 自然対流

自然対流とは、「温度差による浮力で生まれる熱移動」です。
下図の水分子スマイルくんの移動がイメージです。

水分子スマイル君がなかなかホラーな仕上がりに

浮力が生まれる原理は、温められた流体は膨張し、密度が下がります。
その結果、高温伝熱面より遠く離れた冷えた流体と比べて軽くなるため、浮力が生まれます。

② 強制対流

強制対流とは、「流体が流動しているとき、強制的に行われる熱移動」です。

名前の通り、強制的に流動するときは強制対流と呼びます。

具体例を挙げてみましょう。

例えば、図の様な単純モデルがあるとします。
左からU∞の流体が流れているとすると、静止した平面付近では、平面からの慣性力の影響で
速度は下がります。ある距離を離れると流速U∞になって流れます。
速度境界層を境に定速領域と減速領域が存在します。

更に図の様に流体U∞を平面壁に沿って流すと、流体の力と慣性の力により「乱流せん断力」が生まれます。これが乱流境界層です。一方、乱れの無い境界層を層流境界層と呼びます。
熱伝達率は、乱流境界層>層流境界層 高い数値になります。
つまり、熱の伝わりを良くするためには、流れが乱れた乱流境界層を作れば良いのです。
乱流促進体と呼ばれる管がありますが、これはまさにこの理屈です。
伝熱実験式による計算では、乱流と層流の場合で計算式が異なります。
詳しくは、熱伝達率の計算方法で紹介します。

熱対流の式(ニュートンの冷却法則)

では、いよいよ熱対流を定量的に計算する式をご紹介しましょう。
熱対流の式は、ニュートンの冷却法則をベースに考えます。
ニュートンの冷却法則とは、

「固体と流体との温度差があまり大きくないときは、
固体表面とこれに接する流体間の熱の出入りはその両者の温度差に比例する」

これもまた長い・・・簡単にすると、

伝熱量は、温度差と表面積に比例する。 

これ実は、無理やり手計算するために考えた手法なので、実際には、比例 ではなく、
対数関数的なグラフになります。しかし、手計算では扱いきれない為、
固体(高温側)→ 流体 (低温側) の流体側は、いづれ一定温度(θf)になるとして、
そこを直線で結ぶ関数に置き換えて表現しています。

式に置き換えると、、、

$$Q ∝ (θw - θf)× A $$
(※∝は、比例を意味する記号です。)

これを=(イコール)の式に置き換えると、

$$Q = h (θw - θf)× A  (W) $$

ここで、h は熱伝達率といい、単位は、  下記のようになります。

$$h = (\frac{W}{m2・K})$$

更に熱輸送量(放熱量)=発熱量として、温度上昇を求める形式に変形すると、下記のようになります

$$温度差(℃)= (\frac{発熱量(W)}{伝熱面積(m2)×2.15×係数C})^{0.8} $$
上記係数Cは熱伝達率の計算方法でご紹介していますので、こちらをご参照ください。

熱伝達率は状態値だ 

熱伝達率は、流体内部で生じる熱移動の為、流体の速度・密度などによって、値は変化します。
つまり、熱伝導率のように固体固有で定まる物性値とは異なり、
複数のパラメーターによって定まる状態値であるといえます。

もっといえば、熱伝達率は、”操作可能”なんです!
熱設計では、熱伝達率も操作して目的の熱移動を達成させます。

熱伝達率の一覧、詳しい計算方法はこちらでご紹介していますので、
是非ご覧ください(^^♪

実際最近では多くのエンジニアは、CAE(コンピューター支援ツール)を用いて解析することが多いと思います。熱伝達率を直接入力する場合は、
①実験値として把握している。
②簡易的なツール(熱伝導解析など) が多い気がします。
その為、流体シミュレーションの場合は使わない場合が多いですね。

沸騰

沸騰は皆さんもご存じの物理現象ですね。
沸騰の流れ

1.自然対流(非沸騰)

2.サブクール沸騰(核沸騰)
液温が飽和温度に到達していない状態の沸騰

3.飽和沸騰(核沸騰)
液温が飽和温度に到達したときの沸騰
湯沸し器の最後のブクブクがこの沸騰ですね。

4.バーンアウト
容器に銅線などを入れて加熱したとき、線温が高くなり焼き切れる現象

5.膜沸騰
バーンアウト後も高温にすることで、加熱面が上記膜で覆われる状態の沸騰

沸騰中の水の熱伝達率は(1.2~2.3)×10^4 W/(m^2・K)

バーンアウト付近になると5.8×10^5 W/(m^2・K)まで上昇するため、
同じ沸騰現象でもどんな沸騰によるかで10倍以上は変わる。

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