はじめに
熱伝達率とは、対流熱伝達の記事でもご紹介した通り、技術的係数です。
この記事では、熱伝達率の代表値(水)一覧 と 熱伝達率の求め方について説明します!
その前に!皆さま、熱伝導率と熱伝達率の違いはお分かりでしょうか。
意外と両者がごっちゃになっている方が多いです。。。
一緒ではないです!むしろきちんと分けないと伝熱工学的なアプローチで計算は出来ないです。
不安な方は、こちらに熱伝導率と熱伝達率の違いを記しましたので、是非ご確認ください♪
最初の最初に熱伝達率の代表値(水)は下記です。
ご覧いただくとお分かりの通り、熱伝導率には幅があります。
その為、きちんと把握するためには次項の計算で求める必要があります。
液体の様相 | 熱伝達率 h (W/m2・K) |
自然対流中の水 | (2.8~5.8)×10^2 |
強制対流中の水 | (1.2~5.8)×10^3 |
沸騰中の水 | (1.2~2.3)×10^4 |
熱伝導率は2種類の方法から求めることが出来る。
熱伝導率の求め方は大きく2種類あります。
恐らく呼び名は存在しないため、勝手に名付けました。
しかも両者とも実験式です。伝熱工学の教科書に書いている計算式では②が一般的です。
① <空気の場合のみ>簡易計算式(実験式) おススメ!
② 詳細計算式(実験式)
次項でそれぞれの方法をご説明します。
① 簡易計算式で求める方法
簡易計算式で求める方法をおススメする理由は、
計算が簡単であること・詳細計算式との比較でも差異が少ないことがあります。
但し、流体は空気に限られますのでご注意ください。
簡単計算の場合のステップは下記のようになります。
<STEP1> 求めたい熱伝達の状態は<強制対流>か<自然対流>?
(熱伝達の詳細はこちら)
<STEP2> 求めたい熱伝達の状態は表のどの状態に当てはまる?
係数を引用して式に代入して算出する。
<強制対流の熱伝達率の計算>
面に平行な風速V(m/s)の気流を受ける長さL(m)の等温平板の表面の熱伝達率は下記の式
$$平均熱伝達率(W/m2・K)=3.86 × \sqrt\frac{V}{L}$$

※ 面全体が均一な温度になっている場合のみ使用可能。
強制対流の計算例はこちら!
<自然対流の熱伝達率の計算>
$$熱伝達率(W/m2・K)=2.51 × 係数C × (\frac{温度差}{L})^\frac{25}{100}$$

これらの式は非常に便利ですので是非使ってみてください(^^♪
自然対流の計算例はこちら!
尚、上記式の出典元は「養賢堂 伝熱概論 著者 甲藤好郎」となります。
現在、絶版ですが、伝熱工学の親本とも呼ばれ、実験式の数も多いです。
技術論文の参考文献としてもメジャーです。(2021.9.8 追記)
② 詳細計算式で求める方法
下記、経験則を用いることで熱伝達率hを求めることができます。
実験式は、「伝熱工学の学び方」に載っていますので、ご覧いただくことを推奨します。
興味ある方は是非お手に取ってみてください。
例. 流れに平行に置かれた平面上での対流熱伝達率
A:強制対流のとき
$$ 層流Nu=0.332Re^\frac{1}{2}Pr^\frac{1}{3}(Pr>0.6) $$
$$ 乱流Nu=0.0296Re^\frac{4}{5}Pr^\frac{1}{3}(Pr≒1) $$
※代表長さxは先端からの距離、物性値は温度(θw+θ)を2で割った値。
【層流と乱流の識別方法】
$$Re<(3~5)×10^5の時は、層流$$
$$Re≧(3~5)×10^5の時は、乱流$$
層流と乱流の意味が分からない方は対流熱伝達の記事へ
B : 自然対流のとき
$$ Nu=0.54(Gr・Pr)^\frac{1}{4} [10^5<(Gr・Pr)<2×10^7]$$
$$ Nu=0.14(Gr・Pr)^\frac{1}{3} [2×10^7<(Gr・Pr)<30×10^9]$$
求められたNu(ヌッセルト数)より、
$$ Nu=\frac{(h)\times(L)}{λ}=\frac{(熱伝達率)\times(代表長さ)}{熱伝導率}$$
逆算して求めることができるのです。
経験則に用いる無次元数の導入過程(興味あるかたのみ対象)
ここからは、少々マニアックになります。ご興味のある方だけご覧ください。
こちらにご紹介する内容の詳細は、上記同様「伝熱工学の学び方」で分かりやすく説明があります。
興味ある方は是非お手に取ってみてください。
先ず、熱伝達率を求めるために必要な変数を洗い出しましょう。
熱伝達率に影響を及ぼすのは下記パラメーターになります。
変数名 | 記号 | SI単位 |
流体の速度 | v | m/s |
物体の代表長さ | L | m |
表面と流体の温度差 | θ | K |
流体の粘度 | μ | kg/(m・s) |
流体の熱伝導率 | λ | W/(m・K) |
流体の密度 | ρ | kg/m3 |
流体の比熱 | c | J/(kg・K) |
(流体の膨張係数×重力の加速度) 体積膨張に伴う浮力 | βg | m/(s2・K) |
これらの数値をグループ化し、無次元数になる様に組み合わせると下記になります。
ここで、グループ化は「バッキンガムの定理」と呼ばれる手法を用います。
バッキンガムの定理とは、
ある物理現象の特性を説明するために必要な互いに独立な無次元量の数は、その現象に関係する物理量の全数Nから、そのN個の物理量の次元式を表すのに必要な基本単位の数Mを差し引いたものに等しい」という法則です。
さて、、、チーム化に戻ります!!!
1.チーム[ヌッセルト:Nu] :流体と伝熱面間の熱伝達の強さ
$$ Nu=\frac{(h)\times(L)}{λ}=\frac{(熱伝達率)\times(代表長さ)}{熱伝導率}$$
2.チーム[レイノズル:Re] :流体の粘性の影響度
$$ Re=\frac{(u∞)\times(x)}{ν}=\frac{(代表速度)\times(代表長さ)}{動粘度}$$
平板に沿う流れ:代表長さは先端からの距離
管内流:代表長さは内径
3.チーム[プラントル:Pr] :速度分布と温度分布の関係
$$ Pr=\frac{ν}{α}=\frac{動粘度}{熱拡散率}=\frac{\frac{μ}{ρ}}{\frac{λ}{ρCp}}$$
4.チーム[グラスホフ:Gr] :自然対流の影響度
$$ Gr=\frac{l^3gβθ}{ν^2}$$
これらの無次元数は、熱伝達率hに対する他の因子の影響度合いとも言えます。
実験式にこれらの 無次元数を代入することで、熱伝達率hを算出することが可能になります。
最後まで閲覧いただきありがとうございました!
少しでもお役に立てれれば幸いです。